リプロダクト

今回はいつもとはちょっと違った話題について書いてみたいと思います。
かなり長文になりますし小難しいです。すっ、すみません。
興味のない方もいらっしゃるかもしれませんがお付き合いいただければと思います。


家具における「リプロダクト」というのをご存知でしょうか。

デザイナー家具(ex.イームズやル・コルビジュエの名作家具など)のうち意匠権が切れた先行品を
正規メーカー以外のメーカーが製作した家具のことです
(物によっては正規メーカーが復刻版を製造していることもあります)。

これらの家具はリプロダクト、或いはジェネリック製品などと呼ばれます。

意匠権はすでに切れているので同じデザインで外部メーカーが製作しても違法にはなりません。

リプロダクト製品の製造によってメーカーが被る利益としては
「既存の有名デザインをタダで用いることができる」
「0から自力でデザインした商品よりもよく売れる」
ということが考えられます。

消費者の側から見れば何と言っても
「オリジナルとほぼ同じデザインの商品を安く買える」
ことがメリットと考えられます。

「じゃあ両者ともハッピーじゃないか。何も言うことない。」
と思われるかもしれませんが、そううまいことばかりではないのが現実社会です...orz


少し話は変わりますが、ジェネリックという言葉は医薬品にも使われています。
ジェネリック医薬品とは、家具同様、
オリジナルの先行医薬品の特許が切れた後に、
オリジナルを製造していた製薬会社以外の製薬会社が製造した
先行医薬品と同等の成分を持つ医薬品のことを言います。

ただ、家具のジェネリック製品とジェネリック医薬品の違いは
オリジナルとジェネリック商品の同等性が保証されているかどうかにあります。
ジェネリック医薬品に関しては生物学的同等性試験(血中薬物濃度の比較)の結果を
厚生労働省がチェックしています。
言ってみれば第三者によって先行品とジェネリック製品の同等性が保証されているわけです※。


一方、家具の分野ではオリジナルとリプロダクト(ジェネリック)製品の
等質性を保証するような第三者機関は存在しません。

そのため同じオリジナル商品のリプロダクト製品でも
メーカーによって品質に大きな差があるようです。

勿論しっかりと高品質なリプロダクト製品をリリースしているメーカーもあるでしょうが
あまり品質にこだわり過ぎてしまうと
コストがかかりすぎてリプロダクト製品の最大の売りである
「オリジナル商品と比べた時の安さ」が損なわれてしまいます。

また、よく「オリジナルがクロムメッキ使用なのに対しうちのはより高価なステンレスを使用しています。」
といったリプロダクトメーカーの説明文を目にしますが
ステンレス使用だからといって必ずしもその商品が高品質なわけではありません。
クロムメッキがはがれることによって生まれる味もあるはずだからです
(ステンレスの方が耐久性が高いという点については同意です)。


百聞は一見に如かずです。
オリジナル商品とリプロダクト製品の比較をしたサイトがあるのでご覧になってみてください。
サイトへのリンクはこちら↓
http://vanilla-kagu.com/011eames/04dsr/index.html

勿論メーカーや商品によって違いはあるでしょうが
新品の段階でこれくらいの差があるようです。
使い込んでいったらさらに違いが生じてくるのかもしれません。


リプロダクトは確かに安いですし
メーカーを選べば高品質な物が手に入るのでしょう。
そもそもオリジナルが本当に高品質なのかもわかりません。

メッキがはがれた物を「これも味だ。」と感じる人もいるでしょうし
「薄汚れている」と感じる人もいることでしょう。

高いオリジナル商品を一点買って愛でる人もいれば
リプロダクト製品でインテリアをトータルでコーディネートすることを優先する人もいるでしょう。

自己責任に基づいていればどのような行動・判断も否定されるべきではないと思います。


それを踏まえた上で皆さんは
リプロダクト製品を買いますか?買いませんか?



ジェネリック医薬品の承認には臨床試験は義務付けられておらず
メーカー主導の生物学的同等性試験の結果だけをどこまで信頼していいのかはわかりません。
厚生労働省側にも医療費を削減したいという意向があるでしょうから
本当に第三者的な立場で厳密に規制していくつもりがあるのかどうかにも疑問は残ります。
しかし、今回はここらへんの議論はスルーします。
チェック項目があり、それをチェックする機関があるという事実だけを提示したいので。