House Codes of Maison Margiela

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メゾンマルジェラのコレクション

はじめに

ジョンガリアーノ率いるメゾンマルジェラが用いる用語(house-code)は数が多く、わかりにくいのでまとめてみました。ガリアーノが目指すものは高度に抽象的で、これを一般的な商品に落とし込むのはかなり難しそうです。だからこそ、オートクチュールである「0(アーティザナルCo-Edコレクション) 」があり、そこで示されたコンセプトが「白タグ(Co-Edコレクション)」「1( 女性のためのコレクション)」「10(男性のためのコレクション)」「6(MM6)」などを通して、よりウェアラブルな形で提供されるという序列構造が必要になっているのだと思います。今回調べてみて、マルタンマルジェラの意思を受け継ぎつつも、ガリアーノのクリエイティビティを発揮するために、とてもよく考えられた構造になっていると感じました。

 

 

House Code

New/Unconscious Glamour

メゾンは中世におけるブルジョワジー、アフリカの部族の女王など、さまざまな文化や伝統に対するリサーチを通して、現在・未来のグラマーを見出そうとしている。「グラマー」の定義は明示されていないが、「精神的豊かさ」や「(既成概念からの)自由さ」と換言できるのではという印象。

Decadence

「退廃」「衰退」「退化」などを意味する。メゾンでは「不可抗力のように周期的に巡ってきては、積もり積もった余剰(服の機能、デザイン、素材など)を削ぎ落としていくこと」という意味で用いられている。様々な文化的修飾を削ぎ落とした際に残る、服の本質とは何かを見つめ直す作業とも考えられる。

Gender Fluid

「性の流動性」の意味。メゾンは男女の区別に意味を見出さない。Co-Edコレクションなど、男女共通のコレクションに象徴される。

Appropriate the Inappropriate

「不適切な要素を適切にする」の意味。他の用途で用いられている服を別の用途で用いるといった行為を通して、慣れ親しんでいる感覚を刺激し、服を着るという行為に新しい意味を見出す。

Memory of...

あるアイテム(A)の中に、異なるアイテム(B)の一部を融合させる。それによりBの機能やストーリーを呼びおこす。

Anonymity of the Lining

本来、内側(ライニング)とされていたものにデザインや機能性を持たせる。5ACがわかりやすい。

Decortique

「皮を剥く」という意味。服の輪郭だけを残して、本来目に見えない内側(ライニング)や構造を見せることで、既存の構造に新しい意味を見出す。

Work in Progress

服作りの途中段階で製品を完成したとみなす手法。作業過程自体をデザインとする。

Replica

「複製」「再現」の意味。世界中から集められたヴィンテージの服や靴をメゾンが解釈し、現代的に再現する。1994年から開始。4や14ラインができてからはそちらからリリースされていたが、近年はラインから独立。 

Recicla

「Replica」にリサイクルやアップサイクルを組み合わせた造語。ジョン・ガリアーノが世界中から集めたヴィンテージピースを実際に使用・修復し、過去の遺産を新しいものに再生し、価値を高めるというコンセプト。ヴィンテージピースを再現するReplicaのコンセプトを拡大解釈したもの。エシカルは現代におけるラグジュアリーの一つであるという考えから生まれたとされる。個人的には過去のアーティザナルに近い印象。

 

まとめ

House codeは複数ありますが、「既成概念にあらためて問いを投げかけることで、新しい時代のグラマー(精神的豊かさや既成概念からの自由さ)を表現する」というスタンスは、マルタンマルジェラに通じると感じました。一方で、マルタンマルジェラ時代よりも抽象的で、わかりづらくなっているとも感じました。マルタンマルジェラ時代の手法はもっとシンプルだった気がします。すぐにジョジョで喩えてしまう自分が嫌ですが、マルタンマルジェラ時代は第3・4部(「スピードや精密動作性がすごい」みたいに強さがわかりやすい )、ガリアーノ時代は第5部以降(「シャボン玉により物理的な何かを出し入れする」みたいなわかるようなわからないような表現が多い)という印象。しかし、その高度な思想を複数ラインを設けることでビジネスとして成立させているのは単純にすごいなと思いました。メゾンのビジネスの最下流4本スティッチが付いた財布なんでしょうね。