フォトリーディングとはてなブックマーク

勝間和代さんがプッシュしている「フォトリーディング」なる一種の速読法が気になったので
関連書籍やネット記事をいくつか読んでみました。

フォトリーディング」というと
「文面を写真のように脳に焼き付けていくことで超スピードで本を読む方法」
なんじゃないかと思われがちですが(自分もそう思っていました)
本などを見る限りでは
「自分が知りたいと思っているものを目の前にある本から効率的に拾い上げる方法らしい」
という結論に落ち着きました。

確かにフォトリーディングの代表的マニュアル本「あなたもいままでの10倍速く本が読める」には
「目の焦点をぼかして集中して本を眺めているとその内容が自然と頭に入ってくる」
くらいのことが書かれていますが
自分は全然そこまでたどり着けていませんし、たどり着く予定もありません。

僕が理解した範囲では
本の一文一文を逐一吟味し、
筆者がどのような主張をどのようなレトリックを使って表現しようとしているのかを
筆者と自分をシンクロさせるよう努めつつ理解しようとする従来の「受動的読書」に対し、
結局この本は何が言いたいのか、この本の中で自分に役立つ部分はどこかを意識して
レトリックなどに騙されず、必要な情報だけを取捨選択する「能動的読書」が
フォトリーディングであるようです。

フォトリーディングを実践すると
従来の読書法のように一文一文に着目しなくてよい分、
ページをめくる速度は格段に早くなります。
読みなれた分野の新書(僕ならコンサルティング関連)なら20分くらいあれば一冊読めます。
ただ読みなれていない分野だと「自分が知りたいと思っていること」をなかなか限定できないし
背景知識も含めて理解するよう努めなければいけないのでかなり時間がかかります。

このフォトリーディングというテクニック(僕が理解している範囲において)は
別段新しいものではないと思います。

例えば学術論文を読みなれている人は
読みなれていない人に比べて論文を読むのが10倍は速いと思います。
それは彼らが論文で読むべきところを知っているからです。

そういう人の多くは、自分が論文を書く時に
この論文が使えるか、使えるならどこがどう使えるかを意識した上で
一般的な論文の構成順である、アブストラクト(要約記事)→背景→結果→考察→結論ではなく
アブストラクト→結論→結果→考察
の順に勝手に論文を読みかえていると思いますし
絶対に一文一文の表現を吟味したりはしていません。

これを一般的な読書でも実践しようというのがフォトリーディングなのだと思います。
テクニックを身につけるためのマニュアルとしてではなく
読書に対する発想の転換を促すためのツールとして
フォトリーディング関連の書籍を読むのは面白いと思います。

注:小説をフォトリーディングしようとする行為は
  小説のあらすじだけを把握しようとすることとニアリーイコールであり
  読書を非常につまらなくするものなので要注意。


さて、ここから少し話が変わるのですが
先日、はてなで「お前ら、ブクマして勉強した気になりたいだけなんだろ?」
という記事が注目を集めていました。
http://anond.hatelabo.jp/20080814160709

はてなブックマークは所謂ソーシャルブックマークというもので
従来はinternet explorerだとかfirefoxなどのブラウザに個人レベルで保存していたブックマークを
ネット上に保存してネットユーザー間で共有しようというものです。

「お前ら、ブクマして勉強した気になりたいだけなんだろ?」の記事の概要は
「ネット記事をブックマークしている人は、ブックマークすること自体に満足して
その内容をその場で覚えようとはしていないのでブックマークしても意味がない」
というものでした。

「受験の時に参考書を買っただけで勉強した気になる」みたいな感じでしょうか。

この主張は一理あるのだろうなと想像するのですが
僕ははてなブックマークの意義についてもう少し肯定的な立場をとっています。

ある記事をブックマークするのは
その記事をなんらかの理由で面白いと思ったからだと思います。
数あるネット記事の中から面白いと思うものを選択するという行為は
ネット全体を大きな本に見立てれば
フォトリーディングにおける
「本の中で自分に役立つ部分はどこかを意識して
レトリックなどに騙されず、必要な情報だけを取捨選択する」
行為に近いのではないかと思うのです。

いらないものはブックマークしない。
必要な(面白い)ものはブックマークする。
ユーザーに漫然とネット記事を眺めさせるのではなく
ブックマークするかどうかという選択を意識させるという点で
はてなブックマークは優れたシステムだと思いますし
リテラシーを育成しうるシステムだと思います。

ただこれは、「この記事は多くのブックマークを集めているから自分もブックマークしとこう」
という発想だとダメでしょうけれど。