Numberに思うこと
スポーツ雑誌、Numberの5月21日号を読みました。
今号のテーマは「欧州サッカー特集 最強の組織論」。
今号の中心は間違いなくFCバルセロナです。
しっかりとした若手育成のための下部組織(カンテラ)をもつことで名高いバルセロナですが
そのバルセロナの象徴であるヨハンクライフがインタビューで次のようなことを語っています。
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強い組織とはどう作るのか、それは独自のスタイルを貫くことだ。
例えばチェルシーはアブラモビッチ会長の巨額資金投入で
世界からエリートを集め、強固なチームを作った。(略)
これが現代サッカーにおける一つのモデルとなりつつある。
一方のバルセロナは主力7人が下部組織育ちで、
クラブの哲学を受け継ぎながら育ってきた。
例えばメッシがそう。(略)
そんなスペクタクルな選手を育てたのもバルセロナの哲学なのだ。
---------------------------------------------------------------------------
既に完成された「いい選手」をお金で集めてくるか、
自分達の哲学に基づいて「いい選手」を育てるか、
この二つが、現代サッカーで「強い組織」を作るための2大戦略のようです。
クライフが「組織を作る側」の人間として上記のような興味深い発言をする一方で、
そのクライフを輩出したオランダのアヤックスのファンも面白い発言をしています。
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(突然どこかの大金持ちがぽんと近年低迷しているアヤックスに大金を寄付してくれたら?問われて)
まず、そんなことはありえない話だし、そんなことには現実味がないよね。
それにだよ、そのお金持ち一人が権力を持ってしまうのはよくないと思う。
だって彼が4-4-2にしようと言い出したら(アヤックスは伝統的に4-3-3のシステムを取っている)、
アヤックスがアヤックスではなくなっちゃうじゃないか。
一時的な変更ならともかく、
僕たちアヤックスはウィンガーを配した4-3-3じゃなきゃいけないんだ。
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さらに、同じアヤックスのユース部門のテクニカル・ディレクターは以下のようなことを語っています。
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我々は選手を人として大事にしているので、
アムステルダム近郊60km以内でしかスカウティングをしない。(略)
子どもは12、3歳まで親元で育ち、友達と一緒に過ごすべきだよ。(略)
そう、俺たちは大企業になんかなりたくないんだ。クラブチームであり続けたいんだよ。
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地元に根付いたクラブチームであり続けようとするアヤックス。
その精神はクライフにも受け継がれているのでしょう。
そしてそのクライフの教え子であり、現バルセロナ監督であるグアルディオラにも。
既に完成された「いい選手」をお金で集めてくるか、
自分達の哲学に基づいて「いい選手」を育てるか。
この3者は確実に後者を選択しているようです。
翻ってファッションのことを考えてみると
ファッションも二極分化が進んでいます。
high fashion 6月号で平川武治さんはこう言っています。
--------------------------------------------------------------------------
パリのオートクチュールを頂点とするファッションのピラミッドは
今、根底から揺られています。
H&Mやザラの台頭に見られる安価で日常的な衣料品のトレンド化により
トレンドを軸としてきたプレタポルテ(高級既製服)の価値が脆弱になってきた。
プレタポルテのデザイナーは「ラグジュアリー」を目指すか
または、「トレンド化した衣料品」のカテゴリーでしか
仕事ができなくなってきたが現状です。
--------------------------------------------------------------------------
トレンド(になりうるデザインや価値観)をコレクションを通して提案しているプレタポルテのブランド。
提案された「トレンド(になりうるデザインや価値観)」を収集し、メタな視点から見つめ、
要素だけを抽出して日常的な服に落としこむファストファッションブランド。
サッカー界における2大戦略が
既に完成された「いい選手」をお金で集めてくるか、
自分達の哲学に基づいて「いい選手」を育てるか、なら
ファッション界の2大戦略は
既に提案された「トレンド(になりうるデザインや価値観)」を集めてくるか、
自分達の哲学に基づいて「トレンド(になりうるデザインや価値観)」を育てるか、
の2つであるように思えます。
しかしじゃあファッション業界におけるプレタポルテのブランドが
サッカー界におけるバルセロナのように
自分達の哲学に基づいて「トレンド(になりうるデザインや価値観)」を育てられているかと言うと
必ずしもそうではないようにも思えます。
プレタポルテのブランド自体、他のブランドの手法をメタな視点から見つめてみたり
既に完成されたトレンドを追うようなクリエイションをしてはいないかと。
さらに言うと僕自身、
「僕たちアヤックスはウィンガーを配した4-3-3じゃなきゃいけないんだ。」
と語るアヤックスファンのように、そしてかつてのアメトラスタイルなどのように
「俺たちのファッションはこうじゃなきゃいけないんだ」
というほどのものを持ち合わせていない気もします。
複数のコレクションがほぼリアルタイムに
ネット上でザッピングできる時代に
メタな視点で物事を見るのは比較的たやすいことです。
でもブランド側もメタな視点を持っていて
消費者もメタな視点を持っていて
しかもそこには相互作用が生まれうるなら
メタにメタが重ねられてもはや何が何だかわからなくなってきます。
それこそファッション業界全体が
表層的に浮かんでは消える、しかし実際には誰がそれを求めているのかわからない、
「トレンド」を追い求める、
無為な活動の場になりかねません。
「僕たちアヤックスはウィンガーを配した4-3-3じゃなきゃいけないんだ。」
「そう、俺たちは大企業になんかなりたくないんだ。クラブチームであり続けたいんだよ。」
今の時代に提供者と消費者がこういう価値観を共有できることこそが
プレタポルテのブランドが追い求めるべき「ラグジュアリー」の一つの形なのではないかと
考えさせられてしまいました。
今号のテーマは「欧州サッカー特集 最強の組織論」。
今号の中心は間違いなくFCバルセロナです。
しっかりとした若手育成のための下部組織(カンテラ)をもつことで名高いバルセロナですが
そのバルセロナの象徴であるヨハンクライフがインタビューで次のようなことを語っています。
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強い組織とはどう作るのか、それは独自のスタイルを貫くことだ。
例えばチェルシーはアブラモビッチ会長の巨額資金投入で
世界からエリートを集め、強固なチームを作った。(略)
これが現代サッカーにおける一つのモデルとなりつつある。
一方のバルセロナは主力7人が下部組織育ちで、
クラブの哲学を受け継ぎながら育ってきた。
例えばメッシがそう。(略)
そんなスペクタクルな選手を育てたのもバルセロナの哲学なのだ。
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既に完成された「いい選手」をお金で集めてくるか、
自分達の哲学に基づいて「いい選手」を育てるか、
この二つが、現代サッカーで「強い組織」を作るための2大戦略のようです。
クライフが「組織を作る側」の人間として上記のような興味深い発言をする一方で、
そのクライフを輩出したオランダのアヤックスのファンも面白い発言をしています。
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(突然どこかの大金持ちがぽんと近年低迷しているアヤックスに大金を寄付してくれたら?問われて)
まず、そんなことはありえない話だし、そんなことには現実味がないよね。
それにだよ、そのお金持ち一人が権力を持ってしまうのはよくないと思う。
だって彼が4-4-2にしようと言い出したら(アヤックスは伝統的に4-3-3のシステムを取っている)、
アヤックスがアヤックスではなくなっちゃうじゃないか。
一時的な変更ならともかく、
僕たちアヤックスはウィンガーを配した4-3-3じゃなきゃいけないんだ。
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さらに、同じアヤックスのユース部門のテクニカル・ディレクターは以下のようなことを語っています。
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我々は選手を人として大事にしているので、
アムステルダム近郊60km以内でしかスカウティングをしない。(略)
子どもは12、3歳まで親元で育ち、友達と一緒に過ごすべきだよ。(略)
そう、俺たちは大企業になんかなりたくないんだ。クラブチームであり続けたいんだよ。
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地元に根付いたクラブチームであり続けようとするアヤックス。
その精神はクライフにも受け継がれているのでしょう。
そしてそのクライフの教え子であり、現バルセロナ監督であるグアルディオラにも。
既に完成された「いい選手」をお金で集めてくるか、
自分達の哲学に基づいて「いい選手」を育てるか。
この3者は確実に後者を選択しているようです。
翻ってファッションのことを考えてみると
ファッションも二極分化が進んでいます。
high fashion 6月号で平川武治さんはこう言っています。
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パリのオートクチュールを頂点とするファッションのピラミッドは
今、根底から揺られています。
H&Mやザラの台頭に見られる安価で日常的な衣料品のトレンド化により
トレンドを軸としてきたプレタポルテ(高級既製服)の価値が脆弱になってきた。
プレタポルテのデザイナーは「ラグジュアリー」を目指すか
または、「トレンド化した衣料品」のカテゴリーでしか
仕事ができなくなってきたが現状です。
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トレンド(になりうるデザインや価値観)をコレクションを通して提案しているプレタポルテのブランド。
提案された「トレンド(になりうるデザインや価値観)」を収集し、メタな視点から見つめ、
要素だけを抽出して日常的な服に落としこむファストファッションブランド。
サッカー界における2大戦略が
既に完成された「いい選手」をお金で集めてくるか、
自分達の哲学に基づいて「いい選手」を育てるか、なら
ファッション界の2大戦略は
既に提案された「トレンド(になりうるデザインや価値観)」を集めてくるか、
自分達の哲学に基づいて「トレンド(になりうるデザインや価値観)」を育てるか、
の2つであるように思えます。
しかしじゃあファッション業界におけるプレタポルテのブランドが
サッカー界におけるバルセロナのように
自分達の哲学に基づいて「トレンド(になりうるデザインや価値観)」を育てられているかと言うと
必ずしもそうではないようにも思えます。
プレタポルテのブランド自体、他のブランドの手法をメタな視点から見つめてみたり
既に完成されたトレンドを追うようなクリエイションをしてはいないかと。
さらに言うと僕自身、
「僕たちアヤックスはウィンガーを配した4-3-3じゃなきゃいけないんだ。」
と語るアヤックスファンのように、そしてかつてのアメトラスタイルなどのように
「俺たちのファッションはこうじゃなきゃいけないんだ」
というほどのものを持ち合わせていない気もします。
複数のコレクションがほぼリアルタイムに
ネット上でザッピングできる時代に
メタな視点で物事を見るのは比較的たやすいことです。
でもブランド側もメタな視点を持っていて
消費者もメタな視点を持っていて
しかもそこには相互作用が生まれうるなら
メタにメタが重ねられてもはや何が何だかわからなくなってきます。
それこそファッション業界全体が
表層的に浮かんでは消える、しかし実際には誰がそれを求めているのかわからない、
「トレンド」を追い求める、
無為な活動の場になりかねません。
「僕たちアヤックスはウィンガーを配した4-3-3じゃなきゃいけないんだ。」
「そう、俺たちは大企業になんかなりたくないんだ。クラブチームであり続けたいんだよ。」
今の時代に提供者と消費者がこういう価値観を共有できることこそが
プレタポルテのブランドが追い求めるべき「ラグジュアリー」の一つの形なのではないかと
考えさせられてしまいました。