ヒゲを生やしたハゲのベルギー人について

昨日twitter上で
「ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク、ベルンハルト・ウィルヘルム、ジョン・ガリアーノあたりに言及するように」
との指示を頂いたので、一番興味のあるウォルターについて少し書いてみました。

twitter上に書いたことを一部加筆・修正し、以下にまとめてみます。



ウォルターは多分マスコットキャラだったパクパク(これ↓)でイメージが固定されちゃってると思うし、

イメージ 1

全体的なテイストとしてはそれで間違ってないとも思うけど、
自分にとっては性器とか陰毛とかそういうセクシュアルなイメージ↓が強いです。

イメージ 2

イメージ 3

あまりよくわかっていないから軽はずみなことを言うと怒られそうですが、
ウォルターがやっているのは
「アイコンはどこまでアイコン足りうるか、
アイコンは何を表象し、かつ何を表象しえない(或いは意図的に表象しない)かを明らかにする試み」
のような気がしています。

で、アイコンについて考えるウォルターが選んだアイコンが
性器とか陰毛(とそれによって表象されたりされなかったりするもの)なんじゃないかと。

性器をそのまま服に転写プリントしたら怒られる。
でもアイコンにしてしまえばイケる。
陰毛くらいなら転写でもイケる。
あるものはアイコンとしてしか表現できなくて、あるものはアイコンじゃないほうが表現できる。
そしてアイコンで表現することによって失われるものもあるし、得られるものもある。
さらにアイコンが何を意味するかは、そのアイコンを見る人が所属する文化や社会に依存する。
アイコンって何でしょうね、っていう。
それを着ちゃうって一体全体どういうことなんでしょうね、っていう。
そんな感じではないかと。

ウォルター自身は自身の作品に性的なものを取り上げる理由について
Vice Magazineのインタビューの中で次のように語っています。

「なぜならセックスは人生でとても重要な要素だからさ!
もちろん、オレたち自身にとっても大切だろ?
オレの作品の中ではそこにもっとダークな凶暴性みたいなのが加わるんだが、
それがウマくバランスを取っているんだ。」

上にも書いたように、ウォルターと言うとパクパクに代表されるような
「カラフルでポップで竹下通り付近の不思議ちゃんが着ている服を作っている(いた)人」
というイメージが強いと思いますが、
彼が実際に行ってきたのは
ファッションと記号と象徴と表象の関係性に真正面から向き合おうとする試みであり、
それは詰まるところ、社会とファッションの関係性を捉えなおそうとする大真面目な取り組みだった
と言えるのではないでしょうか。

アイコンに注目する服作りという意味では、
ウォルターとNIGOがやってることは近いのかもしれません。
ただ、前者はアイコンをファッションと社会との関係の中で捉え
後者はアイコンをマスに訴えかけるツールとして捉えている。

ウォルターが商業的に一時期、無駄にヒットしたために
同じようにキャラクターブランドとしてくくられがちですが
両者には上記のような違いがあるように思えます。

もちろんどちらのほうが優れているというわけではありません。

アイコンを攻めるために「使う」のがNIGO
アイコンの「意味を問い直す」のがウォルター。
僕の中ではそんなイメージです。



twitterの断片的なつぶやきを無理やりまとめたので
かなり読みにくくて、申し訳ありません。

つぶやきの中でも引用したVice Magazineのインタビューへのリンクを貼っておきます↓
http://www.viceland.com/jp/v5n11/htdocs/bearded-bald-belgian-897.php?country=jp

こちらも併せて読んでいただくと、
僕の言わんとしていることが、なんとなくご理解いただけるのではないかと思います。

ついでにウォルターの公式HPへのリンクも載せておきます。
http://www.waltervanbeirendonck.com/

最後に。
ワタクシ、ウォルターにはあまり詳しくありません。
間違いなどがありましたらご指摘いただければ幸いです。



追記:
イノベーションとコラボレーション↓でマルジェラに触れたときにも書きましたが
http://blogs.yahoo.co.jp/margielamarni/34787177.html
ウォルターに関しても、最初から(そして今でも)
「アイコンの意味を問い直そう!」というのが彼の服作りの一番のモチベーションではない気がしています。
ただ自分の服作りを内省した結果、そのような自分の姿勢にも自覚的になった、というか。

多分、このエントリーで書き損ねたのは
ウォルターの、他のアントワープ勢にはない、明るさ、バカバカしさ、パワーではないかと思っています。
ウォルターはアイコンの意味を行ったりきたりさせてはいるし、
たしかにそこも彼の服作りにとって重要なんだけど、
もっと単純な「パワー」にこそウォルターの特徴はある。
そんな気がしています。

まとめると、ウォルターもまた「パワフルな変態」の人だということでしょうか(^^;