話の聞き方

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今日は奥さんが僕を置いて遊びに行ってしまったので
僕もやりたいだけ仕事をすることができました。
泣いてなどいません。
そんなわけで今仕事モードなので少し仕事の話を。


以前、ファッションに関する著作でも有名な鷲田清一先生の講義を聞く機会があったのですが
その中で鷲田先生は以下のようなことをおっしゃっていました。

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人の話を聞く時に一番重要なのは
「最後まで話を聞く」ということです。
私は最後まで話を聞きますよということを相手に言語的・非言語的に伝えて
相手の話が終わるまで相手に話をさせることが肝要です。

そして、これは以前河合隼雄先生がおっしゃっていて、
その時は私もよく理解できなかったのですが、
話をよく聞かない、聞き流すということも重要なんです。

そしてこれが非常に上手いのが水商売の方々です。
つかず離れず、こっちの話を聞いているようで聞いていない。
聞いていないようでたまに相槌をうったりする。
そういう人にはつい話をしてしまう。
なんだか心地いいんです。
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僕自身、人の話を聞くのが仕事のようなところがあるのですが
どちらかというと僕のやり方は
営業マンやコンサルタントの方が用いる方法に近くて、、
「相手が本当に言いたいことは何なのかという仮説を話の中から推測して
適切な質問をすることで話を展開し
必要であれば先に立てた仮説を修正し
相手と自分の共通認識を作っていく」作業と言うことができると思います。


このやり方は話が進めば進むほど盛り上がります。
会話が終わると「すごくスッキリした」「自分の中の問題が整理できた」
といった評価をいただけることもあります。

僕が用いている手法における一番の武器は
「質問」です。
会話を効果的に展開するために一番必要なのは適切な質問を適切なタイミングですることであり、
それによって相手と自分の間の認識の溝も(相対的にですが)埋まっていき
最終的に相手側の「なんかこいつは話がわかる奴なのかもしれないな」感
(信頼感にも近い感情です)につながります。

そして適切な質問をするためには相手の話をよく聞き、
分析することが非常に重要です。


そんな背景もあって鷲田先生の言う
「話をよく聞かない、聞き流す」感覚というのは僕には
いまいちピンとこなかったんです。


しかし先日、僕のいる業界では有名な精神科の先生と飲む機会があって、その先生も
「私、話半分くらい聞いてないよ。適当に相槌打っているもん。
そうしてるとそのうち相手が話し終わるからそこで二言三言言ってお終い。」
というようなことを言っていました。

で、そんな話をしていると横にいた知らない方が酔って
こちらのグループに話しかけてきたんです。

僕はその人の話を相槌を打ちながら聞いて
その酔った方もノリノリで話してくれたのですが
まあ会話が終わらない。
酔っているからちょっと公共の場として、初対面として、不適切な言動も出る。
そしてそういった彼の言動を僕の相槌や質問が助長してしまっているような気がしたんです。
酔った人の発言を真面目に受け答えしているうちに
酔った人の話が酔った文脈でエスカレートしていっているなと。

僕がその人と話をしている間、精神科の先生は適当に相槌を打って
話半分で、まさに「聞き流す」態度を取っていました。
僕は結構時間が経ってからようやくそれに気づいて
会話の主体を精神科の先生に委ねてみました。

そうすると酔った方は最初そのままのハイテンションで話し続けていたのですが
次第に少しづつテンションが収まってきて
そのうち自分の席に戻っていったんです。
そしてそれは「相手にされなくてつまらないから」ではなく
「一通り言うことは言ったしここらがひきどきかな」といった感じの戻り方でした
(実際後になってからもう一回来ました 笑)。
僕が話を聞き続けていたら
彼はひどく酔ってやや偏った持論を展開し続けていたかもしれません。

その場で初めて、
「話をよく聞かない、聞き流す」ことの意味がわかったような気がしました。


鷲田先生や精神科の先生と僕とでは
話を聞く目的(片や治療目的と片や共通認識の形成)も違いますし
一概にどちらが優れているという問題ではないと思います。
ただ、実生活の場面ではどちらの手法も身に付けておくことが重要だなと考えさせられました
(この他にもディベートのための手法というのもあるでしょうし)。


いやあ、まだまだだね。