ファッションショーの新たな形?

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マルタンマルジェラは9495awシーズンに
有名な「ドールコレクション」を発表しました。

今日ご紹介するのはそのドールコレクションに関する
independent紙の94年の記事です。
記事へのリンクはこちら↓
http://www.independent.co.uk/life-style/fashion/news/a-new-fashion-in-designer-shows-martin-margiela-showed-his-new-collection-on-the-same-day-in-six-different-cities-tamsin-blanchard-saw-it-in-london-1447819.html

マルジェラがデザインしていた頃はよかった
と、懐古的になっていても仕方がありません。

ただ、ドールコレクションのプレゼンテーション自体
非常に興味深いものだったようなので
ベストプラクティスの一つとして記録に残しておきたい、というのが
今回の記事をアップした一つの大きなモチベーションとなっています。

記事のタイトルは
「ファッションショーの新たな形?マルタンマルジェラが新作コレクションを6都市で同時発表」です。

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ロンドンに学ぶイタリア人学生のSabrinaは
パリを拠点に活動するベルギー人デザイナー、マルタンマルジェラ
会えるかもしれないという期待から
落ち着かない素振りを見せていた。
「彼がここに来るかどうか、知ってる?」
彼女が尋ねる。
彼女はマルジェラの敬虔なフォロワー、つまり、マルジェラ信者なのだ。

水曜日の夜、彼女は初めてマルジェラのショーを生で見る機会に恵まれた。
彼女と彼女の友人Mauro(彼もまたマルジェラを着ている)は、
マルジェラファンのジャーナリスト、フォトグラファー、スタイリスト、
そして何事かと怪訝そうにJosephの店内を外から眺める通りすがりの人々からなる
一団に加わっていた。
「彼、ここに来てくれないかな」
マルジェラの象徴である取り外し可能な袖を私に見せながらMauroが言う。
しかしマルタン(マルジェラを知る人は、MartinではなくMar-tanと発音する)が
そこに姿を見せることはなかった。

今回のマルジェラのショーは、ファッションにおける、前例のない、「事件」だった。

この春、マルタンマルジェラは94年の秋冬コレクションを
ショーという形では発表しなかった。
その代わりに、マルジェラは
コレクションが実際に店頭に並ぶ時期に合わせて
あるプレゼンテーションを行った。

9月7日、夜7時。
世界中の6つの都市で、
それぞれの街に住む女性12人が
マルジェラの服に身に包んで現れた。

プレゼンテーションは、
パリの4箇所に加え、ニューヨーク、東京、ミラノ、ボン、ロンドンで行われた。
しかし、マルジェラがどの都市にいるのかを知る者は
誰一人としていなかった。
それは、例のごとく、
デザイナー自身より、服とそれを着る人のほうが重要だ
というマルジェラの考えによるものだった。

「このプレゼンテーションの基本的なアイディアは、
ショップにいるお客さん、そして私達の服を着てくれる女性達に、
もっと近づきたい、ということなんです。」
と、マルジェラのスタッフであるPatrick Scallonは言う。

「ファッションショーは常にプロによる、プロのためのものでした。
マルジェラは、地理的にも物理的にも
その間口をもっと広げたいと考えたんです。
同時に彼は、新しい力を求めてもいました。
彼はその力が、彼の服を着る人々から生じてくることを望んだのです。」

ロンドンでマルジェラの服を身に纏うことになった12人のうちの1人、Aniamakaは
痩せた、24歳の、美術を学ぶ学生だ。
彼女はLadbroke Groveを歩いていて
彼女のポラロイドを見たマルジェラに見出された。

Gymは45歳。
マルジェラの友達の友達の知り合いである彼女もまた、12人のうちの1人だ。
「ファッションには興味がないんです」とGymは言う。
今までにマルジェラを着たことはないそうだ。
「最初にマルジェラの服を見た時は、どうかな、と思ったんです。
でも今では、とても気に入っています。
自分がバービーになったような気がして。」

彼女のこの発言と、彼女が着用している「Ken’s jacket」の間には
浅からぬ関係がある。
「Ken’s jacket」はバービーのボーイフレンドである、Kenが着用しているジャケットを
そのままの比率で拡大したものなのだ。

モデル達のメイクは、メイクにばかり目が行ってしまわぬよう
控えめに抑えられている。
「眉毛書く?」と、メイクアップアーティストが、
スキンヘッドで眉もないJuliaに尋ねる。
Juliaは普段、彼女の言葉を借りれば、「バーで退屈な仕事」をしている。
彼女が着用しているのは
ワークコート、ヘビーニットのレギンス、
そしてマルジェラの象徴である足袋シューズ。
首には髪の毛でできたペンダントがかけられている。

予定の時間。

人だかりは、白い紙で覆われたJosephの窓を、期待に満ちた目で見つめていた。

その前で、ドラマーの一群が演奏を始める。

次の瞬間、窓を覆っていた紙が引き裂かれ、12人の女性が姿を現した。

マルジェラは、噂されていたように、ニューヨークにいた。
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不況でランウェイショーを行わないブランドが増えている今。
消費者が、遠い国で発表される、めくるめくようなファッションの世界に酔うことよりも
すぐに日常生活に取り入れることができる、リアルなスタイルを求めている今。
こういう時代にこそ、
この94年のマルジェラのプレゼンテーションのような試みが
求められている気がします。

そしてそれは、決してできないことではないように思えるのですが
どうなのでしょう。