Visionaries ヴィジョナリーズ

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ファッション関連書籍の紹介です。

Visionaries(ヴィジョナリーズ)は
著者であるスザンナフランケル
1997年から2001年にかけて
23組25名のファッションデザイナーにインタビューした記事をまとめ
一冊の本として刊行したものです。

インタビュー記事の出典は
インディペンデント紙やデイズド&コンフューズド誌などです。

和訳版が出版されたのは2005年ですが
もとの英語版の発売は2001年です。
そのため記事自体は古いものになり
トムフォードがまだグッチのデザイナーであったりと
現状とは一致しない面もあります。

しかしインタビュー自体が
ヴィジョナリーズ(明確なヴィジョンを持つ者達)というタイトルどおり
デザイナーの服(もしくは靴)作りへの基本的な姿勢、哲学を問うものであるため
時間的な齟齬はこの本に関しては殆ど気になりません。

もともと個別のインタビューをまとめたものなので
統一性に欠く部分もありますが
個々のインタビューは非常に面白いものです。
HF誌で、たまに後半のほうに掲載されていた
デザイナーへの一括アンケートに似た感じでしょうか。


印象的な言葉がいくつかあったので紹介させていただきます。


デザイナーが気にかけるべきことは自信の確固たる信念だけだ。
消費者はオレの作品を気に入ったなら、それを手に取ればいいだけの話だ。
 -アレキサンダー・マックイーン

(トレンドを追いかけることにウンザリしているかという質問に対し)
そうとも限りません!(中略)我々にとっては実際に服を着る方々が、
デザイナーの提唱するのとは異なる着こなし方を発見したり、
トレンドに踊らされないということのほうが重要なのです。
 -マルタン・マルジェラ

僕は単なる作り手で、服を着る人たちが自由な発想で着てくれればいい。
僕の考えではデザインは生活に入りこまなければ意味がない。
そうじゃなきゃ、ただの飾り物だ。
 -三宅一生

僕はファッションの亡者ではありません。
人生にはファッションよりも大切なものがある。そうでしょう?
 アズディン・アライア

私は、全く新しいものを創造し、異なる美意識や価値を提案したい。
そして、人間の存在そのものについても探求したいのです。
 -川久保玲

ファッションとは、時にファシストのようなもの。
スタイルのいい人は時代遅れなんて言うようなものなんです。
それってバカらしいと思いませんか?
背が高くて痩せている女性がいる、それはそれで完成されているけど、
胸やお尻が大きい女性がいたらその女性も素敵じゃないですか。
人はそれぞれ違って当然。
本人が健康で、快適で、いいと思えば、その人は美しいんですよ。
 -ジャン・ポール・ゴルチェ


ほぼ全員に共通するのは
ポストモダン的な「消費者個々人における意味を尊重する」という姿勢でしょうか。
川久保玲は他のデザイナーに比べると
大きな物語」を志向している感があるかもしれません。
しかし彼女も「強い服」を通して異なる価値観を提示し
「多様性を受け入れさせることで物事に対する個人の姿勢を柔軟にする」ことを
目的としていると考えれば
他のデザイナーと究極的には同じ方向を向いていると言えると思います。


個人的にはアズディン・アライア

僕はファッションの亡者ではありません。
人生にはファッションよりも大切なものがある。そうでしょう?
 
というコメントが一番好きです。


ファッションは人生の全てではありません。
でも日常を理屈抜きで楽しくしてくれるものです。

自分の人生は自分で面白くしないといけません。
甘くないですね。。。