グループダイナミクスのことはよく知りません

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僕は毎年夏には小学生対象のサマーキャンプに
ボランティアスタッフとして参加しています。

キャンプの期間は1週間。
参加者は小学生1~6年生の男女70名くらいで
年齢ごとに12グループに割り振られ
大学生ボランティアがリーダーとして
各グループを受け持ちます。

僕はスタッフとしての参加なのでちょっと役割が違うのですが
スタッフだからといってリーダーより偉いわけでもないし
リーダーだからといって小学生より偉いわけでもありません。

言葉にすると安っぽいけど
大学生からも小学生からも、等しく色々なことを教えられます。
いや、ほんとに。


キャンプの存在意義は色々あって
キャンプに関わる人間の数だけあっていいと思うのですが
大雑把に分けるとこういうことだと思います。

・子どもが親から離れた場所で集団生活の仕方を学ぶ(他者との関係性の中でどう振舞うべきかを知る)
・学生ボランティアが子ども・仲間への向き合い方を学ぶ(他者との関係性の中でどう振舞うべきかを知る)
・毎年参加するメンバーに帰属する場を保証する(リピーター率が高くボランティアもキャンプ出身者が多い)

僕よりもキャンプ歴の長い人のほうが圧倒的に多いので
それぞれに意見はあると思いますがまあこんな感じかと。


キャンプで重要だと僕が思うのは表現の仕方。
一つのことを子どもに伝える時
「こうしなさい」
「こうしなきゃだめでしょ」
と言うのが一番シンプルですが
それでは伝わらないことが多い。

その状況を冷静に分析して何を言うべきか考えることは勿論重要ですが
それをどう言うか(或いは言葉は用いず姿勢で示すか)が重要なんだと毎年痛感します。
そしてそういうのが抜群にうまい人がキャンプにはいる。


とまあここまでが長い前フリでここからが本題です。

キャンプはキリスト教系の団体(西城秀樹的なところです)が主催しているので
キャンプにはチャプレン(牧師さん)も同行するのですが
去年、キャンプ前の打ち合わせで
新しく来られたチャプレンがボランティアに
キリスト教の考え」という講義をしてくれることになりました。

僕は無宗教なので正直この講義名を見た時から
「面倒くさっ」と思っていたんです。

すると講義のはじめに彼はこう言いました。
「キャンプは子ども達、リーダー、スタッフが皆でするものです。
だから皆の中に共通の意識はあったほうがいい。
今日は皆に一つだけ覚えて帰ってもらいたいことがあります。
僕は今日1時間、時間をもらっているので
まずは55分間ゲームをしましょう。
その後に5分間だけ話をさせて下さい。」

キリスト教の理念についてありがたいお話をみっちり
聞かされると思っていたので一先ず安心。
しかしまだ油断は出来ません。

彼は続けます。
「まず二人組みになって下さい。いいですか?
それではペアになった人とじゃんけんをして
なるべく少ない回数で、
おなじもの、ちょきならちょきであいこになるようにして下さい。
ただし、しゃべってはいけません。
あいこになったら挙手して下さい。」

5回ほどで全てのペアがあいこになりました。

「次に他のペアと一緒になって四人組を作って下さい。
そして同じようになるべく少ない回数でおなじものであいこになるようにして下さい。」

2回であいこになるグループ、5回以上あいこにならないグループに分かれました。

「次に、8人のグループを作ってください。
またなるべく少ない回数で、おなじものであいこになるようにしましょう。」

3つできたグループのうち
2グループは2回であいこに。
1グループは1人(仮にA君としましょう)が皆と違うものを出し続けたため
何回も何回もあいこになりませんでした。
皆さん既にお気づきのように
このゲームは1回目で最多だった手を2回目に皆が選択すればいいのです
(ex.最初にちょきを出す人が多かったら次は皆ちょきを出す)。

ゲームが終わってチャプレンが話し始めます。
「Aが違うものを出してなかなか終わらなかったね。
他のメンバーはあの時Aに対してどう思った?」

メンバーはそれぞれに答えます。
「A、頑張れ。」
「ちゃんとしろよ(笑)」
などなど。

チャプレンが続けます。
「じゃあ、Aはどう思ってたの?」

「恥ずかしかった~。」
とA君。

チャプレンが言います。
「今のゲームでは実はAがいてくれてとてもよかった。
皆はもう何回もミーティングを重ねてお互いのことをよく知っているし
実際にプライベートでも友人だという人もいるでしょう。

集団行動の中で自分だけ何かできなかった時、或いはルールに乗れなかった時
その人が思うのは
『頑張らなきゃ』ではなくて
今、Aが言ったように『恥ずかしい』なんだよね。
勿論『頑張らなきゃ』って思う子もいるだろうけど
『恥ずかしい』って思っちゃう子もいる。
Aはもう大人だし皆との関係性もあるから
『恥ずかしい』って声に出して言えるけど
キャンプに参加している子どもは
声に出せないでうつむくだけかもしれない。
お腹が痛いって言うかもしれない。

皆は大人だから
Aに対して「頑張れ」って声に出せるし
「ちゃんとしろよ」って笑って言える。
でもキャンプに参加している子どもの中には
「なんでできないんだよ。」って言っちゃう子もいると思う。

そういう時に僕達には何ができるかな。
何をするべきかは子どもと自分の関係性、お互いの性格もあるから
色々な回答があっていいと思う。
なんでできないんだよって言っちゃう子を注意することも時には必要かもしれないし
恥ずかしいって口に出せるような雰囲気を作るのもいい。
一人では解決が難しい時には他の人に入ってもらってもいい。

キャンプは楽しいものです。
子どもも楽しいし皆だって楽しい。
でも集団で何か楽しいことをする時には
どこかでこういう思いをしている子がいるかもしれないということを
頭に入れておいて欲しい。
皆にはキャンプを思いっきり楽しみながらも
頭の片隅に常にそういう共通意識を持っていてほしいなと思います。」


以上の話を読んで皆さんがどう思われたかはわかりませんが
少なくとも僕は、こいつすげえって思いました。

「リーダーなんだからリーダーとして常にグループダイナミクスを意識しろ。」
と言った方が(頭よさそうで)格好いいし、簡潔だけど
結局何のことやらイマイチわからず
実用性の低いお題目で終わってしまいます。

伝えるべきことをちゃんと意識して
その前フリに55分使う。
伝えるべきことは最後の5分で伝える。
迂遠なように思えますが
ちゃんと行えれば非常にスマートだと知りました。


さて、こんな感じで人から教えられることが多いキャンプですが
ただ今ボランティアリーダー募集中ですので興味のある方は是非ご連絡ください
(勧誘のための長い前フリだったという罠)。