6+ アントワープ・ファッション展に行ってきました

イメージ 1

昨日、新宿のオペラシティで行われている
6+ アントワープ・ファッション展に行ってきました。

展示されているルックの数が少ないなど多少の批判を得ている展示のようで
あまり期待していなかった面も無きにしも非ずだったのですが
予想外に楽しめました。


既に各所で言われているように
アントワープがこれまで、そしてこれから作り出している(いく)ファッションを
体感するという意味では
ルック数が少なく、そしてそれぞれのルックに対する説明も少し不足していて
消化不良であった感は否めないと思います。

ただ僕としては、世界に冠たるアントワープ王立芸術学院がどのような教育を提供しているのか、
その一端に触れることができたという点について
非常に有意義な展示だったと思っています。


アントワープ王立芸術学院は

・三年次には民族衣装をテーマにしたルックを作成する。

・四年次にはオリジナルの発想に基づいたルックを作成する。

この教育姿勢を長年(30年以上)にわたり貫いているのだそうです。


単発の発想に基づいた服をいきなり作らせるのではなくて
まず服と文化の関係性を、民族衣装を通して考えさせた上で
ようやく次のステップとしてオリジナルの発想に基づいた服を作らせる。

実際今回の展示で示されていたルックを見ても
伝統的な(そして多くはとても西洋的な)服装を
再解釈したアイテムが多かったように感じました。

文化と服装の関係性を踏まえ上でのオリジナルの構築。
これは個人的には素晴らしいことだと思います。
そしてマルタンマルジェラも例に漏れずその姿勢を受け継いでいると思います。


ただ色々なデザイナーの色々な形の服を見ていて僕が思ったのは、
「伝統(文化)を踏まえた上でのオリジナルの構築」だけでは
限界があるのではないか、ということでした。
伝統的な服装に斬新な解釈を加え、素材やカッティングを換えて提示する。
それはそれで(服飾の歴史をよく知らない僕にとってすら)非常に興味深いのですが
じゃあ、それらを「着たい」と思うかというと、それは違うかなあと。

僕が惹かれるのは「背景となる文化を踏まえてそれをひねった服」ではなく
「文化を踏まえて作られた美しい服」なんだと思い知らされました。


伝統を踏まえることは大事だと思います。
現代的なものに伝統的なものをミックスする(或いは逆も)ことで面白いものが作れるかも知れません。
でもなんだかそこで終わってしまったらそれは現実レベルの被服という行為から少し離れた
美術史学的な取り組みになってしまうのかなあと一消費者としては思いました。


そういう面から言うと
僕は今回展示されていた服やショーの映像の中では
マルジェラとラフシモンズ(特に1999ssのブラックパーム)に
強く惹かれるものがありました。

正直言ってマルジェラの後継者としてラフシモンズの名前が挙がったとき
「なぜ!?」と思ったのですが(ラフシモンズファンの方、申し訳ありません)、
今回の展示を見て彼が評価されている理由が少しわかったような気がしました。